【日 時】 平成28年 6月9日(木) 16時15分~17時15分
【場 所】 有機材料システムフロンティアセンター 未来ホール11号館2F
【講演内容】
①演題 :「デジタルファブリケーション技術の使い所」
講演者: 東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授 川原 圭博氏
要旨 : スマートフォンとクラウドコンピューティング環境が、草の根プログラマが考えたアプリを低コストで世界中に広める契機
となったように、レーザー加工機や3Dプリンタ、そして、Arduinoといった新たなハードウェア開発プラットォームの
出現によりハードウェアのラピッドプロトタイピングがかつて無いほどのスピードと価格で可能になってきた。我々は、
電子回路モジュールなどを自在に組み合わせ、電子回路をより少ない障壁で作成するための回路プロトタイピング技術に
ついて研究を行ってきた。現在では焼成不要な銀ナノインクを用いることにより、一般的に入手可能な家庭用インク
ジェットプリンタと市販の銀微粒子を含むインク、写真用紙やPETフィルム、導電性テープ等を用いても、高度な電子
回路素子を作成することが可能である。オープンソースプログラミングボード用の電子回路基板から、柔軟性のセンサ、
農業用の水分センサまで様々なものが試作可能であることを示した。当技術は、現在までにAgIC株式会社を通じて商用化
されており、様々なユースケースに活用されている。家庭用のインクジェットプリンタの他には、手書きで電子回路を
描ける導電性ペン、そしてそれを修正可能なErasable Markerはものづくりワークショップや教育用途として活用され
ている。本講演では,センサネットワークなどInternet of Thingsを実現するための機器やシステムの中にディジタル
ファブリケーション技術を取り込んだ事例について広く紹介する.
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②演題 :「有機エレクトロニクス,ソフトマターとソフトロボットが切り拓く明るい未来」
講演者: 東京大学 大学院 情報理工学系研究科 特任講師 梅舘 拓也氏 博士(工学)
要旨 : ロボットをあたかも生物のようにしなやかに適応的に振る舞わせるためには,ロボットの機構系を生物同様柔らかい
素材で設計する必要がある.そのような設計思想に基づき,われわれの日常生活でも安全に駆動し,人や環境と柔軟に
インタラクションしつつ何らかの機能を果たす機械システムを実現しようとする試みがSoftroboticsと呼ばれ注目を
集めている.本発表ではそのような背景や研究事例をいくつか紹介した上で,それらロボットと有機エレキトロ二クス
やソフトマターという研究領域が融合することによる可能性を考えてみたい.
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③演題 :「日本が印刷エレクトロニクスの覇権を握るために」
講演者: AgIC株式会社 代表取締役社長 清水 信哉氏
要旨 : あらゆる分野で日本の経済や技術が力を失う中、印刷エレクトロニクスは日本に残された数少ない勝算のある産業分野
のうちの1つである。一方で、集約型のエレクトロニクスから分散型のエレクトロニクスへの変化の中、その需要の変化
に反応し、米国を中心として印刷エレクトロニクスへの投資が再び増加しつつある。日本にとっては今がまさに勝負
どころであり、15年後に日本がこの分野での世界の覇権を握るためには、技術発展はもちろんとして、これまで日本が
遅れてきたスタートアップの活用も不可欠である。今回は上記のような背景の中で、定量的な日本の立ち位置から、なぜ
今勝負しなければならないのか、技術開発はもちろん、それ以外に何が必要とされているのか、という点について議論
する。
<連絡先 : 11号館2F スタッフルーム (内線:3585)>