8月4日午後4時から、10号館4階会議室おいて、電力中央研究所 坂上 知 氏を講師にお迎えして、第12回有機エレクトロニクス研究センター講演会を開催しました。学生・研究者名の約30名の参加を得て、盛況のうちに終了しました。
要旨:高い結晶性を有する有機トランジスタの移動度は 10 cm2 /Vs 以上にまで達し、性能および安定性の面ではすでに実用化段階にある。一方で、最も単純な I-V 特性も理解されていない点が多く、高移動度有機半導体中でのキャリア輸送の物理の確立が必要とされている。特にキャリアが一分子に局在化したホッピング伝導によるものか、無機半導体のように結晶中にキャリアが非局在化したバンド輸送なのかは実験・理論の両面から多くの議論がされている。我々は溶液プロセスによって作製した有機トランジスタに対して、デバイス特性の温度依存性や、電荷変調分光 (Charge modulation spectroscopy:CMS) によるデバイス中のキャリアの吸収スペクトル、およびホール効果の測定を行うことにより、キャリアの局在化/非局在化について議論を行っている。本講演では、特に冷却とともに移動度が上昇するバンドライクな温度特性を示した高結晶性 TIPS-pentacene と、その誘導体を用いたトランジスタに対して、CMS の温度/電界強度依存性、ホール効果測定、および理論計算の結果を紹介し、結晶性有機半導体の高移動度化への指針を示す。