日本経済新聞5月9日(土)朝刊35ページに掲載されました。
山形大が銀インク生産 電子回路をフィルムに印刷可能
-----------日本経済新聞の抜粋-------------
山形大学は紙やフィルム上に電子回路を印刷できる「銀ナノ粒子インク」の生産に乗り出す。9月にも大学発ベンチャービジネス(VB)を設立する。人体に貼ることのできるバイオセンサーや極薄型半導体などの開発につながり、有機エレクトロニクスの研究開発拠点となっている同大工学部(山形県米沢市)の研究成果の事業化に弾みがつきそうだ。銀ナノ粒子インクの生産VBは米沢市内の工業団地、米沢オフィス・アルカディアに設立する。食品包装用フィルムの10分の1の薄さの電子回路の開発に世界で初めて成功した時任静士教授らのグループが今秋発足に向けて準備を進めている。
今回の構想は2013年度に文部科学省から「大学発新産業創出拠点プロジェクト」に採択されており、VB設立にあたっては同プロジェクトの資金を活用する。東北イノベーションキャピタル(仙台市)が事業プロモーターとして参加し、山形銀行や荘内銀行など地元金融機関も出資に関心を示しているという。開発要員など10人程度の陣容で年間数百キログラムの生産から始め、数年内に生産量を1トン超に引き上げる。年間数億円の売上高を目指す計画だ。量産する銀ナノ粒子インクは、薄く塗布できる金属材料で常温でフィルムなど微細な回路を描くことができる。従来の露光方式ではなく印刷による手法を使うことで、薄くて軽量で、折り曲げたり伸縮できたりするデザイン性に優れたデバイスを、低コストで大量生産できるようになる。今回のVBでインクを安定供給できれば、体に貼ってストレス状態などを測定するバイオモニターやフィルムに印刷する極薄の半導体の開発につながるという。牛肉などの鮮度モニター、商品の在庫管理などに使われるRFID(無線自動識別)タグにも応用できる。
VBで生産した銀ナノ粒子インクはバイオモニターや半導体などへの応用に向けた研究開発に携わる企業に供給する。印刷のしやすさや耐久性などのデータを顧客企業から寄せてもらうことで銀インクの改良に生かし、「印刷装置、インク、製品の3つをメーカーと一緒に開発し、『売れる仕組み』をつくる」(熊木大介准教授)計画だ。